ヤ○ザの組長にお世話になった話
隠す必要もないかなと思ったのでだいぶ遡って書きます。
旅に出た日の話。
初日、不眠で自転車を漕ぎ続け、16時間近くかけてやっとの思いで千葉県柏市に到着した。
古着屋とカフェが併設されたお店で友人の仕事が終わるのを待っていると声を掛けられた。
「にいちゃん日本一周してるのか!!」
顔を上げると小さな犬を散歩させているご夫婦の姿が。
「そうなんですけど、今日が初日で高円寺からここまで来たんです」
「これ立飲み屋をしながらの旅で、柏でもやるんで見かけたらよろしくおねがいします!!」
って感じでその時は淡白にすぐお別れした。
その4時間後の夜9時くらいに同じ場所でまた同じご夫婦に声を掛けられた。
今度は旦那さんが泥酔の状態で。
旦那さんが僕に話しかけてきたと思ったらおもむろに財布を取り出し一万円札を僕に差し出す。
「これで旅の写真撮ってきてくれ!!」
「いやいやいや流石に1万円は受け取れませんよ!!!」
僕はデジカメも持ってきていないし、ケータイも初日から画面がバリバリになって写真が撮れるような状況ではなかったし、移動が困難すぎて絶景スポットに行けるような旅ではないとわかっていたのでお断りした。
「良いんだよ!気持ちだから!!受け取っとけ!!!」
と。あまり何度も同じ問答を繰り返すのはおじさんのご厚意に失礼だと思って「ありがとうございます…」と受け取ると
「よし!1杯飲みに行こう!!」
と僕を連れ出そうとする。
お金もいただいていることだし、お酒は大好きなのでもうなんでもありだな!と開き直ってご馳走してもらうことに。
カフェの近所のお店に入店。
各自の飲み物も出揃って乾杯するなり、おじさんは眉間にしわを寄せながら静かに切り出した。
「俺な、実は”こっち”のもんでよ……。」
”こっち”と言いながら人差し指で頬を斜めになぞる。
なるほど。そちらの筋の方でしたか。
なぜかまったく動じない自分。
おじさんは続ける。
「柏で商売したいなら面倒見てやる!」
と。この時は話半分に聞いていた。
よくいるじゃない、酔っ払って「俺は◯◯組と知り合いだ」みたいな話する人。
その類だと思っていた。
ここまでは……。
おじさんが電話をした。
「旅しながら商売したいって兄ちゃんがいるからお前、面倒見てやれ!とりあえずここに来い。」
電話から数分後、若い人が数名お店に集まってくる。
ほう…なるほど?!
こりゃあ本物だ。見た目的に。
しかも僕の前で、ちょっとした抗争になりそうだったみたいな話をしたりする。
それと、おじさんの丸々としたお腹がシャツの下からチラチラと見え隠れするんだけど、一緒に刺青もチラチラと……
「俺の名前はどこでも使えるから、こっちの関係で本当に困った時は連絡してこい。」
「あ、偽名で登録しとけよ!何かあったらにいちゃんに迷惑かけちゃうからな」
一緒に酒を飲んでいて、この人優しい人だ!って確信した僕はここで冗談交じりに無礼な発言をする。
「本当ですか?!国分町とかススキノとか北九州とかでも使えます!?」
周りの人達が揃って首を縦に振る。
……使えるみたい(笑)
……
………
翌日、僕の面倒を見てくれるという人に電話をすると事細かにアドバイスをくれる。
- 人通り
- ターゲット
- 時間帯
- 警察の巡回
- 役所の人間について
- 地域の組合について
まるで僕がこれからどこかに襲撃に行くかのように細かなアドバイス。
最後に「チンピラ達には声かけないように言っとくから」と最高の後ろ盾をいただいた。
結果的に誰にも何の文句も言われずなかなか良い場所でやらせてもらった。
なぜか喫煙のことは注意されるのに商売については警察にすら何も言われなかった。
そして昨日、71日ぶりにLINEの"新しい友達"に二人の名前が新しく追加されていた。
二人とも本名で。